開催時期

2012年

参加イベント

Genesis 3

概要

見知らぬ風景に立つ。「どの場所でも、そこからしか発信しえない世界性がある」という信念を、世界各地でアートプロジェクトを展開する度に語りかけてきた。そして、その世界的なるものの、隠れた突端を見出し、誰もが見て取れる形に拡張してみせるのが、アーティストの役割だ、と。そのせいか、どこに行っても、先入観を持たない、手ぶらで無防備な「まるで、丸裸同然」の自分がいる。特に阿蘇に来ると、その実感が強い。自然と人間との、赤裸々な関係をとらえる起源が、ここにはあるからだろう。阿蘇スタイルを提案したのは、間に複雑な手続きを介さずに向き合う、自然と人間の第一義な関係の可能性「Potential Primary Position(略してPPP)」が、ここに根づくからに他ならない。


そんな折、気候変動によるものか、むき出しの自然が突然に荒れ狂った。7/11、阿蘇を襲った集中豪雨による山崩れで、大量の木が倒れ、流木となって暴れ狂い、橋桁、ガードレールを壊し、道路の舗装をめくり上げ、死者が出る惨事になった。懸命な復旧作業が続けられる中、暴れ狂った倒木、流木の猛威を撮った一枚の報道写真が、私と自然との赤裸々な向き合いを促した。その一枚の写真は、一地域の出来事として被害者意識を煽るのではなく、地球全体の呻きのような動きの、むき出しの先端を見ろ、と訴えかけてるように思えた。よし、あの無惨な倒木の山から、地球のためのレクエイム、鎮魂歌を。倒木を1メートル単位に切断し、茅を巻いて、縄で締めて、自然の中の安息枕にする。それらを林の中に敷き詰めて、100人分の安息枕の、長い列を作りたい。これは、林を切り開いて、子供達の遊び場にしたいという、阿蘇フォークスクールの狙いとも合致した。


作業が、始まった。林の中に道を切り開くのに、大きな切り株が邪魔していた。ここは、自然エネルギーとの出会いと考え、土中に隠れた根を掘り出していく。切り株の天辺は、凹みを作り、水を溜める。そこに、陽光が差し込む。私が愛する場の究極のイメージ、日だまりに少し近づいた。職業年齢性別国籍といった人間を区分けしてきた制度や境界が溶け出し、日だまりでは全てがひとつになる。「地球のための休息台」と名付けた、そのサークルから、100人分の安息枕の列が延びる。林の中に、阿蘇スタイルの原型が出現した。
そして今、気候変動がテーマのニューヨークでの3ヶ年環境アートプロジェクト(2013-)への招聘参加が決定した。10月に米国東海岸を襲ったハリケーン「サンディ」でもっとも深刻な被害を被った低所得者と一緒に作業してもらいたい、環境科学者と組んでほしい、と真っ向な注文が届く。政治や経済の枠組みでは収拾のつかない地球規模の出来事が氾濫する中、アートの季節の到来を予感する日々が続く。阿蘇スタイルが、日本から世界への突破口となることを確信したい。

Art Work

 

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